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Gallery みなと雑感
Minatomirai
Yamashita park

【続 横浜雑感】

 横浜を離れて4年が経った。先日、3歳になった娘と一緒に横浜に出掛けた。中華街で食事をした帰り、妻は車の窓越しにかつて暮らした部屋を眺めた。新婚時代を過ごしたその部屋からは、山下公園やベイブリッジを望むことができた。懐かしさのあまり涙を浮かべる妻に、娘は「ママ、どうしたの?」と聞いた。「ここは、あなたが生まれる前に、パパとママが住んでいたところよ」。妻と知り合ったのがこの街であり、山手で4年間の大学生活を送った彼女にとっても、なじみの街なのである。

 長い間憧れていたこの街に住むことができたのは口腔外科を学ぶためであった。ただ、歯学部の口腔外科との違いは著しく、随分と戸惑った。入局したての頃、歯科治療の機会の少なさに焦っていた私に「歯科治療は、あとからでも何とかなるよ」と声をかけてくださった先生がいた。たしかに、手術や入院症例を後から学ぶことは難しい。おかげさまで、水平埋伏智歯の抜歯やのう胞摘出など外来小手術はずいぶん経験させてもらった(ご指導いただいた先生方には大変感謝しております)。

 市大で助手をさせてもらった後、横浜船員保険病院に2年間勤めた。それから私は、地元である静岡に帰り勤務医をしている。木曜の休日は、市大の非常勤を続けさせてもらっている。東海道線で市大まで片道2時間半の道のりは、季節の移ろいゆく横浜をながめながら、ゆっくり考えたり読書をしたり、のんびり過ごす貴重な時間だ。

 友人たちが次々と開業していく中、気づけば、勤務医をしているのは私ぐらいだ。こうなったら、理想の医療を実現するために、あせらずに考えよう。そんなある日、横浜行の電車の中で思いついた医院の名前。市大から毎日眺めていたもの、横浜と私の故郷である沼津に共通するもの。決まった、横浜への想いを医院の名にしよう。

 

2007年5月11日 露木良治

横浜市立大学大学院医学研究科 顎顔面口腔機能制御学(口腔外科学) 同門会会報

平成19年6月23日 第12号に掲載

Honmoku pier

【いつかまた横浜で 抜粋】

 横浜でのライブの帰り、本牧埠頭に車を止めてみんなで歌ったことは忘れられない思い出です。あの日のことはなぜかとても印象に残っているので、その想いを曲にしようと思い、いまつくっています。曲名は”本牧埠頭午前0時”にしようと思います。 

 

 今週は補講期間でしたが、実習がすべて終了した学生にとっては一週間の休暇となりました。僕はこの休暇を利用して、臨床実習の間に書いたレポートやノートを整理しました。それと、この休みを利用して横浜医科大学の出願に行ってきました。横浜医科大学は横浜にある大きな大学です。附属病院の病室からは海が見えたばかりでなく、かなたにマリンタワーやベイブリッジも見えました。今回は出願を前提としての見学であり、面接を兼ねたものでした。見学したその日のうちに健康診断を受け、出願の書類も作成し、提出してきました。

 その日は横浜市内のホテルに泊まり、夜、本牧埠頭に行って来ました。一人で海を眺めながら、横浜でライブをした日のことを思い出しました。埠頭からは、あの日と同じようにベイブリッジが見えました。ライブの打ち上げのあと、ベイブリッジを眺めながら、Blue wingのみんなと夜が更けるのを忘れて話しましたね。その日、僕は来年横浜に来ることを心に決めました。十一月中旬に専門科目と英語の試験があり、その結果次第ですが、いまのところ横浜医科大学を真剣に考えています。

「いつかまた横浜で」著 露木良治 医療タイムス社2000年4月発行より抜粋

YCU hospital

【いつかまた横浜で 抜粋】

 僕は、引っ越しの荷物も片付かないまま四月が過ぎ、五月の連休を使ってようやく部屋を片付けました。先週そして今週と、国家試験以来ようやく休みがとれたので、先週、やっと谷口先生のご霊前に歯科医師になったことを報告してきました。そしてきょうは近くのグラウンドを借りて、昭和乳業薬剤部を相手に草野球をしました。グラウンドには、何年もの間忘れていた心地よい五月の風が吹いていました。五月は僕の一番好きな季節です。グラウンドの隣にはテニスコートがあり、「今度はテニスをやろう」という話になりました。

 ここは街の喧騒から離れ、海が近く、緑が多い静かな住宅地の中です。想像していたよりもはるかにいいところで、僕は海が近いことがとくに気に入っています。

 僕は横浜医科大学の口腔外科学講座に所属しています。今年は大学院生が三人と研修医が四人の計七人の新人が入りました。大学院生も最初の一年間は研修医と同じスケジュールで、病棟と外来で臨床を学ぶことになりました。外来では慣れない手つきで歯科治療をしたり、病棟では朝晩点滴をしたりしています。ここは大きな病院だけあって、外来にはあらゆる病気の患者さんが来院してきます。口腔外科の病棟にはたくさんのベッドがあり、毎週一回くらい、朝から深夜までかかる大きな手術などもあって、とても忙しいところです。

 

「いつかまた横浜で」著 露木良治 医療タイムス社2000年4月発行より抜粋

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