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Oral consultation

キシリトール

お口の健康相談室

目次
キシリトールなどの代用甘味料について教えてください。
キシリトールなどの代用甘味料について教えてください。

むし歯は、口の中の細菌、食べ物、歯の状態、時間因子の4つの因子が重なったときに発症することが知られています。この中でも食べ物の中の糖質、特に砂糖が深くかかわっています。砂糖の成分は、ショ糖(スクロース)と呼ばれる糖です。こうしたことからむし歯を減らすためにスクロースに代わる甘味料の開発が進められてきました。これまでにも多くの代用甘味料が開発され、実際に使われています。
甘味料には、単糖類、少糖類(オリゴ糖類)、糖アルコール、高甘味度甘味料などがあります。スクロースは少糖類に含まれます。キシリトールは、糖アルコールの一種です。糖アルコールは甘味料の1つで、ブドウ糖、麦芽糖、パラチノースなどの糖を高温・高圧の状態で還元してできたものです。糖アルコールの特徴としては、砂糖よりも甘味度は低いものが多い、消化吸収されにくいので、砂糖やブドウ糖に比べてカロリーは低く、大量に食べると下痢を起こす可能性があることなどです。なお、糖アルコールには、ソルビトール、キシリトール、マルチトール(還元麦芽糖)、パラチニット(還元パラチノース)、ラクチトール(還元乳糖)、還元水あめ、エリスリトールなどがあります。

キシリトールは糖アルコールの一種で、1997年4月17日に食品添加物として厚生省から認可され、現在ではガムやキャンディーなどのたくさんの菓子類に含まれるようになりました。キシリトールは白樺、ワラ、トウモロコシなどに含まれるキシランという多糖を加水分解して得られたキシロースを還元して作られる天然素材の甘味料です。主にフィンランドで生産されています。

キシリトールはどういうものですか。
キシリトールにはどのような特徴がありますか。
キシリトールにはどのような特徴がありますか。

糖アルコールの中では最も甘く、砂糖と同じくらいの甘さがあります。溶ける時には熱を奪うので、食べると清涼感もあります。カロリーは糖アルコールの中では高めの3.0 kcal/g(砂糖の約75%)です。なお、砂糖のカロリーは4.0 kcal/gです。
キシリトールは天然素材の甘味料であり、安全性が高い食品です。世界食料農業機関(FAO)/世界保健機関(WHO)合同の規格委員会によって、「1日の許容摂取量を限定せず」という最も安全性の高いカテゴリーに評価されています。
キシリトールは腸管から吸収されますが、大部分は代謝されずに排泄されます。そのため、低カロリーの甘味料として、特に糖尿病の患者さんに用いられています。

キシリトールを摂取していれば、むし歯にならないのですか。
キシリトールを摂取していれば、むし歯にならないのですか。

キシリトールが広く使われるようになり、"キシリトールの摂取がむし歯を防ぐ"など、一部に誤った、あるいは行き過ぎた認識がされているようです。そこで、もう一度キシリトールとむし歯予防の関係について考えてみましょう。
最初に述べたように、むし歯は、口の中の細菌、食べ物、歯の状態、時間因子の4つの因子が関係しています。その中でも食べ物の中の糖質、特に砂糖が深くかかわっています。いくつかの研究からスクロースの使用量を減らすとむし歯が減少するということが知られています。こうしたことは、スクロースなどの精製糖の摂取がむし歯を増加させることを示しています。また、おなじスクロース量でも食事時に摂取した場合にはむし歯の発生は少ないことが示されています。別の研究では、食品中のスクロースをすべてキシリトールに置き換えたところ、むし歯の発生はほとんどなかったことが示されました。しかし、現実にはスクロースをすべてキシリトールに置き換えることは今のところ困難です。キシリトールを用いたむし歯の予防法は、追加型齲蝕予防法と呼ばれるもので、ブラッシングやフッ素の応用、正しい食生活や定期的歯科検診に取って替わるものではありません。これらを補い、効果を高めるための材料なのです。キシリトールの作用については、以下に述べます。

キシリトールはむし歯の原因菌にどのように作用しますか。
キシリトールはむし歯の原因菌にどのように作用しますか。

むし歯の主な原因菌であるミュータンス菌は、栄養源としてキシリトールを利用しにくいからです。
スクロースが発酵性の糖質であるのに対して、キシリトールは非発酵性の糖質です。ミュータンス菌はキシリトールを代謝しにくく、グルカンや有機酸が産生されにくいのです。ですから、"キシリトールはむし歯を起こしにくい糖質である"(非齲蝕誘発性)ことはいえます。さらにキシリトールを取り込んだミュータンス菌は、キシリトールが糖代謝を阻害するために他の糖まで代謝できなくなります。こうして、ミュータンス菌は減少します。ただし、こうしたキシリトールの働きは殺菌作用と呼べるほど強いものではありません。
また、キシリトールはその甘さによって唾液を出させる効果もあります。唾液の量が増えると、口の中の酸が中和されやすくなります。それによって一度脱灰した歯にカルシウムなどの無機質が沈着して歯質が補強されること(再石灰化)も促進されます。
さらに、キシリトールが再石灰化を促進したという報告もあります。糖アルコールにはこうした性質があるようです。しかし、キシリトールの抗齲蝕誘発性という性質についてはまだ定説とはなっていません。今後の研究が待たれるところです。

むし歯を防ぐためにはどのような食品を選んだらよいですか。

キシリトールは砂糖と同じくらいの甘さがあるにもかかわらず、むし歯を発生させにくい性質があります。それに対して、砂糖はむし歯の発生に関係しています。
キシリトールを含有をしている食品は主に菓子類です。むし歯の予防という観点から選ぶとすると、まず、砂糖を含有していない(シュガーレスなどといわれます)という基準が考えられます。シュガーレス商品のなかでも、ガムは甘味料以外にむし歯の原因となる成分は含まれていないので、歯の健康を守るという点から推薦されます。なお、1998年8月現在、市場に出回っているキシリトールを含有するガムのうち、キシリトールが50%以上含まれているガムはすべてシュガーレスです。キシリトール含有率100%のガムは歯科医院で購入することができます。
しかし、キシリトールには特有の味や清涼感もあり、さらにカロリーも低いといった特徴もあるので、こうした種々の目的でキシリトールが食品に添加されています。現在のところ「キシリトール使用」と表示する際に含量の基準はありません。日本消費者協会は、「キシリトール含有50%以上の表示を確かめるように」とコメントしています。
厚生省が定める特定保健用食品のうち、歯に関する表示があるものは1998年5月現在、4銘柄があります。
なお、日本トゥースフレンドリー協会は、「食べてから30分以内に歯垢のpHを5.7以下に低下させない」菓子を、むし歯になる危険性がないものとして設定し、「歯に信頼」マーク(傘のついた歯が表示されています)を付与しています。1998年10月現在、11銘柄に付けられています。

むし歯を防ぐためにはどのような食品を選んだらよいですか。
シュガーレスと低カロリーはどのように違うのですか。

厚生省は栄養表示基準で、「シュガーレス」「ノンシュガー」「無糖」「シュガーフリー」「糖分ゼロ」などの表示を「糖類が含まれていない」(基準値は0.5%以下)と定めています。こうした食品には、むし歯になりにくい甘味料が使われています。一方、「低カロリー」「カロリーセーブ」は、「基準とする食品に比べて100g当り40kcal以上の低減がなされていなければならない」と定められており、その比較表示と主要栄養成分およびエネルギーの表示が必要となっています。

シュガーレスと低カロリーはどのように違うのですか。
再石灰化ってどういうことですか。

脱灰したエナメル質を目で見ると、歯の表面がザラザラして白濁して見えます。脱灰も初期の段階では唾液中のカルシウムなどの無機質の沈着によってふたたび健全な歯質に戻るC0という段階もありますが、エナメル質が完全に破壊されてしまったC1という段階ではもう元には戻りません。唾液中のカルシウムなどの無機質が歯に沈着してふたたび健全な歯に戻ることを再石灰化といいます。

再石灰化ってどういうことですか。
キシリトールを配合したオーラルケア用品について教えてください。

キシリトール配合オーラルケア用品が登場し、1998年8月現在、歯磨剤や洗口剤など6社から販売されています。フッ素はキシリトールを加えることにより、その効果が増すことが知られており、今後市場が拡大することが見込まれています。
キシリトール配合の歯磨剤には、ペースト状のものとしてキシリデントライオン、キシリデントライオンこども、チェックアップ(成人用・子供用)、エナメルケア、液体歯磨剤としてクール&クリーン、ママチェックなどがあります。洗口剤には、キシリデントライオンマウスコンディショナー、アパガードマウスオッシュなどがあります。

キシリトールを配合したオーラルケア用品について教えてください。
キシリトールを食べ過ぎるとおなかがゆるくなりますか。

キシリトールなどの糖アルコールは、たくさん食べると一過性の下痢を起こすことがあります。キシリトールについては、体重1kg当り約1.6g(1日摂取量にして約90g)までは大丈夫とされています。これも個人差がありますので、心配な場合には、まず少量食べてみて様子をみるなどの注意をしてください。

キシリトールを食べ過ぎるとおなかがゆるくなりますか。
参考文献

歯界展望 Vol.92 No.2 P297-P317 1998-8.
The Quintessence Vol.17 No.8 P141-P155 1998-8.

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